INTERVIEWY

DATA MIXOLOGY独自の切り口でゲストとの対談やメッセージ、ホットな話題などを紹介します。

マーケティング対談 「デジタル時代のメディアと、あるべきマーケティング」(前編)ゲスト:株式会社共同通信デジタル 代表取締役専務 伊地知晋一様

マーケティング対談 「デジタル時代のメディアと、あるべきマーケティング」(前編)ゲスト:株式会社共同通信デジタル 代表取締役専務 伊地知晋一様

2019.07.29Media

■Chapter_01 コンテンツメディアと顧客体験

桐生_DATA MIXOLOGYの桐生です。よろしくお願いします。本日はゲストにこの方をお招きしております。

伊地知_共同通信デジタル代表取締役専務の伊地知です。本日はよろしくお願いします。
桐生_今回、共同通信デジタル様には「メディアと通信社の関係」、「メディア視聴と人の習慣化」、「メディアと広告の関係」のお話を伺いたいと思います。
伊地知_わかりました。

桐生_先ず、人々のメディア接触・視聴と言えば「習慣化する」と言われています。これについて伺いたいのですが、どういった要素があるでしょうか?
伊地知_例えば、桐生さん天気予報見ますよね? なぜ見ますか?
桐生_やはり、今日の天気はどうかな? と毎日気になるからですね。
伊地知_雨で濡れたりするのが嫌なので、天気予報をチェックするわけです。つまり生活に役に立つと思うので見るわけですね。気になるので毎日見るわけですよ。それで、ニュースも世の中の動きが自分の生活にどのように影響するか、日々みなさん気になるので見ると。例えば仕事をしている方ですと、朝起きる時間や出社する前などだいたい見る時間は決まっています。
その中に入り込んでくるメディアは、なんとなくそれぞれにとって都合の良いものがセッティングされています。例えば、朝起きるとTVをつけていつものニュース番組を見るとか。それぞれに生活のリズムがあってそれを見ることによって、安心、快適に感じるということがあると思います。生活の中のリズムにメディアやニュースが溶けこみながら習慣化していくということです。

桐生_なるほど。そこで、ある調査資料があるのですが、それによると、メディアといっても様々ありますね。SNS、掲示板、新聞社やTV局のような、編集者がいらっしゃってコンテンツを作ってるものもそうです。その中で「コンテンツメディア」と分類されているメディアがあります。人々が情報を受け取ったり習慣的に見るいわゆる専門性や信頼性が高い、あるいは社会的影響力があるのが「コンテンツメディア」と言われています。

調べによると、メディアに挟まれた広告を見た時の視聴率や回数を表すビューアビリティが高いのも「コンテンツメディア」と言われているようなのです。
通信社からみて、信頼性が高いメディアであるから“広告がよく見られている”といった実感はありますか?

伊地知_やはり自分の生活や仕事に関係がありそうなニュースやコンテンツはみなさん理解しようと没頭して読みます。ですので、サイト滞在時間がのびるということはあると思います。
そのコンテンツに対してある程度興味のありそうな広告が、ちゃんとしたクリエイティブとして出ていれば、広告を見る確率はあがってきます。SNSや掲示板はメディアではあるのですが、我々が作っているコンテンツは先ほどの天気予報もそうですが、生活や仕事に役立つというものが一番の目的で、私自身、掲示板も使いますしSNSも見ますが、それはどちらかと言えば娯楽に近い感覚で、例えば「桐生さん今日何やっているのかな、何食べたのかな」と。それはそれで楽しいですが、そこで見る広告と自分が役立てるために見るコンテンツに挟まれている広告とは受け止め方が違うのではないかなと思います。もちろんSNSや掲示板からコンテンツメディアへ誘導されることで、有益な情報を得るということはありますが。

桐生_昨今はメディアといってもどちらかと言えばコンテンツメディアではないもの、例えばSNSや掲示板などが広がっています。
それに伴って、広告が本来見られていないのに見たりクリックしたとカウントをする「アドフラウド」を防止する動きがあります。
アドフラウドは、アドネットワークなどの個々のメディアが不明確なところに広がっているようです。そのあたりが業界課題であると思っておりまして。

例えば、私たちはマーケティング支援事業をやっておりますが顧客体験を一番に考えているんですね。しっかりしたコンテツ、もしくは人々が習慣化して見るコンテンツメディアで信頼性があるもの、例えばこういったところに広告を出していきたい。それがハッピーな広告であると考えます。良いコンテンツに良い広告がつく。これが自然なことですし、顧客体験を良いものにしていくと思います。一方、昨今そうでないものを是正しようという動きが出てきている。このような課題をつぶさに見ていくことを広げて行かなければならないと思っているんですよね。

伊地知_我々も、コンテンツにしっかりお金をかけて作り込んでいます。失礼かもしれませんが、そうではないコンテンツが同じ広告単価であるのは、見合わないな、という思いはあります。しっかりしたコンテンツを提供しているところには、優良な広告がつく。そして優良な顧客体験を与えることが、ユーザーによっても広告主にしてもメディアにとってもみんなハッピーということだと思います。それで、広告主の方がそこまで考えて広告を出しているのかといえば、理解されている方もいらっしゃると思いますが、そうではない方もいらっしゃると。

限られた広告予算ですから、できるだけ優良なメディアに優良な広告を出して、優良な顧客を獲得できる環境作りがもっとできてほしいなと思います。

 

■Chapter_02 共同通信デジタルにおけるデータ活用

桐生_次に、共同通信デジタルでのデータを使った取り組みを伺いたいと思います。例えば、新聞社やTV局など媒体社に対して記事を販売していると思いますが、ニュース記事を分析したりデータを取っていらっしゃるのでしょうか?

伊地知_ニュース記事を販売するということで相手先からデータを頂くことはなかなかできないのですが、自分たちでニュースサイトをいくつか運営しておりまして、その中でユーザーのデータをとることはやっております。例えば、ニュースサイトは記事がたくさん並んでいますが、実は各ニュースを人の手でピックアップし、並べ替えたりしております。リアルタイムでどのくらいのユーザーがどの記事を見ているか、どの辺にマウスオーバーが多いかなど常にチェックしております。それをリアルタイムで見ながら記事を上げたり下げたりしています。そこで気をつけていることは、単にユーザーが好む記事だけを上げ、数字を上げることは、一時的、短期的には良いと思いますが、それだけですとサイト自体のブランド価値を考えると、実はユーザー体験が劣化してくのではないかと。ユーザーに読まれそうな記事も置きますが「これは伝えるべき」というみなさんが知らなかったのではないかという記事を並べる。これをバランスよくやることによってサイトの価値が上がっていくと考えます。それで実際、ユニークユーザーやページビューが上がっていき、ユーザー属性もぼんやりしていたものが段々とはっきりしてくる。共同通信では1日1,000本以上ニュースを作っていますが、そのうちみなさんが触れるニュースはごく一部なんですね。その一部の中でもそのようにバランスをとってサイトを作っています。

桐生_そこまで細かく見ているというのは驚きです。マーケティングサイドでもそこまでしているブランド企業は少ないと思います。例えばオウンドメディアの作り方でも、ユーザーにクリックされるとかユーザーが望むものだけを作ってしまうと公平性、客観性が失われてしまって逆に体験を狭めてしまう可能性もあると思います。

伊地知_ニュースは特にインターネットが登場して以来、偏って読む方が増えたと言われています。統計があるわけではないのですが、「ネトウヨ」という言葉がありますが、自分の考えに近しいニュースばかり読むと思考が偏ってしまうと言われております。それがユーザーにとって良いことかどうかわからないですが、企業がユーザーにメッセージなど何かを伝える時には、ユーザーが喜ぶものだけを出して本当にそのユーザーに対して価値を提供できるかと言えば私はそうではないと思っております。
もちろんユーザーが好むものも出しつつ、もっと知らないことを教えてあげて、知らなかった素晴らしい世界につれていってあげる情報も必要だと思っているんですよね。
一見とっつきにくい記事と思われるかもしれませんが、「慣れた世界」と「知らなかった世界につれてく」の両立した情報発信を広告主に対してもやっていくことでブランドは醸成されていくのかなと。その辺は、桐生さんの専門領域ですけどね。ニュースサイトもそんな雰囲気があると思います。

桐生_アクセス分析ツールやヒートマップなど様々なツールがあって、データだけを見てしまうとどういう人にポテンシャルがあるかなどを潰してしまう可能性があります。反応が良いもの、受け入れられるものだけを発信してしまうと様々なものがシュリンクしてしまう。それはユーザーの興味関心も制約してしまいますし、パイも狭めてしまうんじゃないかと思っています。
私が一時期執筆活動をしている時に、編集長から言われたのが「記事は賛否両論あるのが一番良い」と言われたことがあります。客観性やリアリティーがある。興味が強いものだけではなくバランス感をとっていくんだと。ホームページがオウンドメディアと言われるようになりましたが、どこまでがオウンドなのか、SNSもオウンドなのかアーンドなのか、もしかするとペイドメディアでも広告はオウンドメディアの延長線上にあるかもしれません。
それをクリックして自社のサイトにユーザーが流れてくる。これは導線が拡張しているという考え方でひと続きの体験ですし、ニュースサイトや新聞社、媒体社のサイトに広告を出したとして、そこから自社のサイトに来た瞬間にすごく偏った狭い情報になってしまうよりもバランスがとれたコンテンツが提供されている方が顧客体験は豊かになるだろうと思ったりします。

伊地知_我々の事業の中の大きな要素としてデジタルサイネージ向けのニュース配信があります。電車に乗るとドアの上にモニターがあってそこにニュースや広告が流れているのがあると思いますが、日本全国に何十万面というデジタルサイネージが設置されていて、ますます増えていっている状況です。
これには、広告だけ流しているサイネージは非常に少なく広告とニュース、天気予報などがセットで流れています。それで、統計をとってはいませんが、大抵のメディアを持っている方たちは、ニュースが流れている方が媒体価値が上がり、よりユーザーが見ると言われています。

優良なコンテンツは媒体の価値を上げるとされていて、その影響で我々のニュースもよく使われているという状況です。(後編に続く)

Profile

伊地知 晋一 (いぢち しんいち)
株式会社共同通信デジタル代表取締役専務
株式会社ノアドット代表取締役
国立大学法人 鹿児島大学理学部非常勤講師
2002年より、ライブドアのメディア事業部執行役員副社長として、ポータルサイトのライブドアを立ち上げる。その後、ITコンサルタントや大学の講師を務めつつ、2011年4月に創業した共同通信デジタルの役員に就任し、ニュースとネットを利用した事業に取り組んでいる。また2015年4月にヤフージャパンとの合弁会社としてノアドット社を設立し、代表取締役に就任した。

RECRUIT

データ・デジタルテクノロジーを活用したマーケティングを通じて、
私たちと一緒にブランド企業クライアントの最高の顧客体験づくりにチャレンジしましょう

現在募集している職種一覧

    現在求人情報はありません。