INTERVIEWY

DATA MIXOLOGY独自の切り口でゲストとの対談やメッセージ、ホットな話題などを紹介します。

マーケティング対談 「データ活用で花王が目指す未来」(後編)ゲスト:花王株式会社 データサイエンス室長 佐藤満紀様

マーケティング対談 「データ活用で花王が目指す未来」(後編)ゲスト:花王株式会社 データサイエンス室長 佐藤満紀様

2019.08.21Marketing

■Chapter_05 デジタル時代に必要な組織作りと人材育成

桐生_ビジネスの変革を起こす・迎えるには、関わる人の素養・マインドが最も大切になってくるかなと思います。花王さんの組織・体制作り、人材育成のお考えを聞かせてください。

佐藤_これまでにないことを現場では経験し始めています。ですので、全員がフロンティアの意識を持っています。私の考えになりますが、2つあります。まず、データ分析する人たちだけが集まって何か変革を起こせるかといえば、私たちが扱う日用品に関しては、それは機能しにくいのではないかと思います。いかにして、多彩な人材をワンチームにして事業に向き合えるかが体制作りに重要だと思います。

また、先生と言いますか教える人が少ない活動になりますので、この先どうやって新たな人材を育成していくか。その育て方が課題になってくると思います。
桐生_具体的には人を育てる環境、業務の内容だけでなく工夫されている組織の作り方はありますか。

佐藤_その話をするにあたって先にお伝えしたいのですが、東京オリンピックのある2020年には、小学生のプログラミング教育が必修化されます。早い学校だとプログラミング教育は既に始まっています。その世代が社会人になったタイミングで、プログラミングを経験している人材が企業人として増え始めることは容易に想像できます。今でも一部の人は大学で専攻して企業に入ってきています。そういう人材が会社の中に増えてきたときに、コーチング、業務も交えて誰が教えていけるのか、と。その層の厚さが重要になってくると思います。ですので、今のメンバーには、新しく入ってくる人材を生かせるような能力やスキルを身につけてほしいと思い活動しています。

メンバーに何をさせているかと言いますと、十数人いますが、偶然ではありますがマネージャーを立てておりません。ベテランから新入社員のメンバーをフラットにして、一人一人に明確なテーマを与えて、それに携わるチームメンバーを私が指定します。入り乱れているチーム構成で、様々な業務をクロスするような形をとり、年齢やキャリアを問わず「この仕事はあなたがリーダーです」といった体制を作っています。今年からこれを明確にしてやっています。やってみて思うのは、リーダーになった人は若い人でもマネージメントの仕方であったり、仕事の進め方、コミュニケーション能力など、必然的に経験することでその力が備わってくるのではないかと。
様々な業務が複雑に絡み合っているので、予定表をみるとびっちりスケジュールが埋まっておりかなり辛いとは思いますが、ゆくゆくは必ず生きてくると思いますし必要になってくると思うので、今は我慢してやってもらっています。


桐生_組織も今までの働き方と変わってきそうですね。多彩、多様な人材が入ってきて、様々な専門性を持った方がその枠に留まらずに色々な人と接して成長できる環境を用意できれば素晴らしいと思います。今新人の方も、先生不在の中、フロンティア精神で取り組んでいけば、経験値が高く強い組織基盤ができそうです。

佐藤_期待しているのは5年後、10年後になってきたときに今いるメンバーがデータ利活用を推進するリーダー的な人材になることです。そして今後、学校で基礎を学んできた人たちをうまく機能させられるようなことを想定して業務にあたってもらっています。

桐生_まさに花王さんならでは。業界トップメーカーだからこそのお考えだと思います。弊社DATA MIXOLOGYがメーカー企業の支援をやっている理由として、日本全体を考えた時、多彩な人材が活躍できる組織や環境づくりを社会に出る前の教育を含めて長いスパンで考え、もっと全体で良い社会を作っていくべきだろうと。こういった考えの基礎があるのがメーカー企業だと思うからです。昨今言われる、DX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、仕事の在り方と共に、私たちの働き方も変えていく必要があると言われます。本当の意味で働き方を変えるには、社会全体の雰囲気、学校教育から見直さなければならないと思います。それができるのは、長いスパンでものごとを考えることができる企業にしかできないだろうと思うからです。ネット・IT企業のように数年で転職を繰り返すような働き方には社会的コンセンサスは醸成できないと。


佐藤_それぞれ目的が違い、メーカーは良いものを作ってお客様に届けるのがミッション。良いものを作るときに、私の部署だとデータを利活用する目的が明確にありますよね。ただ、IT企業の場合は、お客様ありきでお客様にあわせないといけないことがあるので、自分たちのためになのか、お客様のためになのかですごく考え方の違いがあるのかなと。そういう意味でメーカーは、実際商品を使っていただくお客様をイメージしデータを活用できるかがポイントになってきます。

 

■Chapter_06 AIに代わることができない人に残された仕事

 

桐生_さて、ここまでデータ活用、本質的なデジタルマーケティング、組織・人材育成などの話をしてきました。では、最終的に人に残される仕事を考えてみたいと思います。私は、もしかすると多彩な人材をまとめて同じ方向に向かっていくためのリーダーシップ。今までになかったビジネス・商品を開発するアイデア、仮説、施策や戦略などの意思決定だと思っています。

佐藤_そうですね。最近、データ分析から端を発しデータサイエンティストという言葉が出てきたり、AIもよく耳にします。データ分析をやっている身からすると、AIは機械学習の延長であったり、ある事象に基づいて最適な答えをコンピューターの力を借りて短時間に出すというもの。人間が持っている限られた脳や時間よりもコンピューターに任せた方が良いものもあるのですが、やはり人間が考えてやったこと以上のことをAIにできるかといいますと、現時点では難しい部分があるのかなと思います。例えば、現在AIで進んでいる分野でいうと、医療や自動運転など。これらは人がやっていたことを、なるべく人が判断してやってきたことよりも良い精度でやる。間違わないように運転する。それらを機械でうまくやるもの。ありがちですが、AIが何でも解決してくれると思う方がいらっしゃいますが、そうではない。自分でデータをみて、読み取り、それをどう活用するかを考えている人たちがAIを導入していかないと、何も変わっていかないと感じております。

 

■Chapter_07 花王の社員としてチャレンジしていきたいこと

桐生_では、佐藤さんが今後チャレンジいきたいこと、未来への意気込みをお聞かせください。

佐藤_個人的な思いですが、みなさんデータの話は難しいと遠慮がちになってしまう部分があります。それを普通の会話にしたいのが一つ。エクセルが標準化したと思いますがデータの利活用もそうしたいです。また、データを使った仕事の仕方や組織をもっと良い方向に変えていきたいです。

桐生_なるほど。メーカー企業はサプライチェーンマネージメントがありますが、これはものづくりに非常に重要な基盤です。もう一つ重要なバリューチェーンがあります。バリューチェーンは、残念ながら日本特有の経営・組織システムによって分断されてきたように思います。これをデータという共通言語を使って統合していきたいと思っています。

佐藤_部署ごとに少しずつそれが起こってきているとは思います。部署ごとに起こってしまうのは仕方ないと思いますが、それらをできるだけ集めて集約するだとか、重複して起こっている活動を情報として吸い上げて企業としてどういう形で活用していけばいいかと。やはり組織が大きいですから、そこを考えていかなければならないと思います。

桐生_最後にメッセージをお願いします。
佐藤_今、データ解析を各社取り組んでいらっしゃいますが、やはり手段と目的だということ。また、データ解析で何事も解決したり事業が成長すると考えるのは悪いことではありませんが、活用したらどのように仕事のやり方を変えられるか、持続的に成長できるような活動をもっと考えてもらえたらと思います。

Profile
佐藤 満紀 さとう みつのり
所属:花王株式会社 マーケティング創発部門 コンシューマーリレーション開発部 データサイエンス室長情報科学を学び1990年に花王株式会社に入社。配属した情報システム部門で、メインフレーム、クライアントサーバー、WEBアプリケーションといったアーキテクチャーが変化した時代に社内SEとして数多くの基幹系業務システムの設計~開発~運用を担当したのち、2004年に発足したマーケティング領域のデータ解析プロジェクトに参画。ビッグデータ、データサイエンティストといった言葉が登場する前からマーケティング部門でデータ統合、分析、可視化に取組む。現在は、長きにわたり現場で実践してきた経験、スキル、知見を活かし、データドリブンなマーケティング活動を推進。また、マーケティング部門とIT部門の連携を強めるための橋渡しを行う。

RECRUIT

データ・デジタルテクノロジーを活用したマーケティングを通じて、
私たちと一緒にブランド企業クライアントの最高の顧客体験づくりにチャレンジしましょう

現在募集している職種一覧

    現在求人情報はありません。